2022年10月28日
こんにちは、スティップルです。
「自分の仕事を振り返ってみる」の3回目です。最後です。
今回は壁画の話を中心に。
2001年頃より壁画の仕事も始めたと前回のブログで書きましたが、
子供の療養環境(入院生活環境)を少しでも豊かにしたいという願いを叶えるため、
2012年、NPOの団体から病院のプレイルームに壁画を描く仕事がありました。
2012年と言えばその前年の2011年は東北で東日本大震災がありました。
その東北の福島市の病院が現場でした。
震災後、光の消えてしまったようになった東北で、
何でもいいから少しでもいいからお役に立てることはないか、
と思っていたぼくは、これかもしれないなと思いました。
福島の美しい風景(雄大な磐梯山と猪苗代湖)と青い空に込めた希望をデザインし、
単身福島市内の病院に向かいました。
描画作業で1週間ほど震災の影響で薄暗い福島市に滞在していましたが、
毎日、ホテル←→現場←→居酒屋だけの行き来でした。
今思えばちょっと観光しとけばよかったかな?なんて思いますが、
その時は描くことに一途でした。
2015年には通常の建築工事の仕事ですが、
岐阜の特別支援学校で大規模な壁画をやりました。 ↓
ここでは、キャラクター作りでちょっと難航し、
結局、地元の特産品である枝豆をモチーフにしました。
壁面各所に岐阜の風景を入れ込んでいるので、
子供達も愛着を感じてくれたんじゃないかな。
2018年はやはりNPOの仕事で、大阪の大きな病院の小児科プレイルームを ↓
ここのキャラクターはそこで働く保育士さんの意見を参考にしたもので、
可愛らしい花の妖精です。ぼくも気に入ったキャラになりました。
ここでの仕事はそんなにヴォリュームも大きくなく、
2週間あれば楽勝で仕上げられると思っていたのですが、
なぜか仕事の進みが悪く、結局倍の4週間ほどかかってしまいました。
何でだったのでしょう・・・。
多分キャラの種類が多く、各々の調色に随分時間がかかったせいかもしれません。
現場仕事はそういったところがなかなか読みづらく、難しいですね。
その翌年2019年は島根の大学病院へ。 ↓
描画作業中、車椅子の男の子とそのお母さんが毎日顔を出してくれて、
いろいろお話させていただいたのが良い思い出です。
絵が好きだって言ってたけど、もう退院して元気にしてるかな?
そして今年2022年。
ぼくの以前のブログ(5月)でもアップさせてもらっていますが、
西尾の特別支援学校の仕事に繋がっていきました。 ↓
長い間仕事をしてきたので、ここに紹介できなかった物件の方が圧倒的に多いですが、
どの物件にも様々な思い出があり、施工写真を見る度にその当時のことが蘇ってきます。
そしてこのように振り返ることができるような、形として残る仕事をさせてもらえたこと、
家族をはじめ、会社や周りの方に感謝してもし尽くせません。
本当にありがとうございました。
またどこかで。
スティップル(Masaaki Inoue)
2022年10月27日
現在ガラス在庫がかなり品薄でご迷惑をお掛け致しております。
代わりのガラスでまかなえる際にはご参考していただければと思います。
SPFの代品をご紹介させていただきます。
SPF100H ハンマードの代品↓
FH-01 ハンマード 3㎜厚
SPF100K クリンクルの代品↓
FK-01クリンクル 3㎜厚
SPF100GG アイスクリスタルの代品↓
GAL-521 グラスファブリク 4㎜厚
紹介しておいて申し訳ございませんが、代品の物も欠品の可能性がありますので、
ご注文の際はお問合せ下さい。
and
2022年10月21日
こんにちは、スティップルです。
10/14に続いて2回目です。
2000年頃の話ですが、突然大きな小児病院に壁画を描くという
ステンドグラスとは全く方向の違う仕事が舞い込みました。
それも壁面の箇所数は30以上、
現場での作業時間は3ヶ月以上かかるようなヴォリュームでした。
事前の打合せも2年以上かかり、
様々な関係者から容赦なく(本当に容赦なく!)、
キャラ決定からストーリー、絵柄まで厳し過ぎる注文をいただき、
ヘロヘロになりながらデザインとプレゼンを繰り返しました。
毎日毎日色鉛筆でデザイン原画を描くのですが、
繊細なグラデーションで丁寧に色付けをしていくので、
時間がめちゃくちゃかかり、なかなか進みません。
それがデザイン修正の度に30枚以上です。
今ならPCを使って描画できますし、修正部分もその箇所だけ描き直して差し替えればOKですが、
当時はアナログ(手書き)でやっていたので、修正の都度描き直しです。
打合せが2週間に一度なので、2週間ごとにその作業は繰り返します。
やがて色鉛筆を握っていた右手はパンパンになり、右肩はついに上がらなくなってしまいました。
休みの度にマッサージに通ってましたねえ、その頃は。
で、何とか完成したのがこれらです(もちろんほんの一部だけの紹介ですが)。 ↓
身体を壊しつつやった根性のプレゼンと、
現場での口に言えないような劣悪環境での作業の末、
30箇所以上の壁画がどうにかこうにか完成。
今ではあり得ない超パワハラな所長に完成の報告をし、
その後その建物が見える近くの丘に一人立ち、
「やってやったぜえ、ウォオー!」と心の中で叫んだことをよく覚えています。
ただそんなことは置いておいても、
2001年当時の日本ではまだほとんど事例のなかった
入院している子供達に寄り添った優しい病院環境になったんじゃないかと思っています。
そしてその甲斐もあってか、その後2期工事、3期工事、増築工事、改装工事と
2015年まで仕事をさせていただくことができました。
そう言えば、改装工事の時こんなことがありました。
病院廊下で絵を描いていたら、廊下の右側からバタバタとした大きな音が聞こえました。
絵を描いているので首をそちらに向けられません。
でも気配でこっちにやってくるストレッチャーだとわかりました。
ぼくの背後を通り際、緊迫したお母さん、看護師さん、担当の先生に囲まれながら
ストレッチャーに横たわった子供さんの顔がちらっと見え、
廊下の左へさっと消えていきました。
日常的にこんなことが起こっているんだ。
何も声をかけられませんでしたが、
手術がうまくいくように祈らずには要られませんでした。
ここの病院の子供さん達は皆それぞれ重い病と戦っている。
何の役にも立てないかもしれないけど、ほんのちょっとだけでも、
描いた絵が癒しになれば・・・。
そんな思いで、自分の身が引き締まるのを感じた瞬間でした。
また、そんな壁画の仕事もやりつつ、
もちろんステンドグラスの仕事もいろいろやっていました ↓
手作り仕掛時計とかも ↓
これは、まず仕掛時計を手作りで作っている工房を探し出し、
そのスタッフの方といろいろ話をしながら、
どことどこを連動させたら面白いか、
仕掛けの方法を協議しながらのデザイン作業になりました。
初めてのことばかりでしたが、とても勉強になりました。
他、2008年には十條大須ビルリニューアル工事のステンドグラスを ↓
他にも住宅向けというか一般向けの優しいイメージのステンドグラスとか
毎日たくさんデザインをさせていただきました。 ↓
でも、住宅向けの物件の中で最大の印象的な仕事だったのは、
フュージング・モザイクをステンドグラスに組み込んだこの仕事ですね
2020年のことでした ↓
オーナーの方がとてもご理解のある方で、
こちらの提案をポジティブに捉えて評価してくださいました。
そのお陰で、フュージング・モザイクを大きく入れて、
従来のステンドグラスとは少しテイストの違う
クールなステンドグラスが出来上がったと思います。
3へ続きます。
2022年10月20日
また今年もクリスマス前に雰囲気を感じさせて
くれるあのガラスが入荷しました!
BUF 4228 Eランク
柊をイメージした様なガラスで、赤い実がフリッ
トで溶着されています。
★JUJO NEWS 11月号でご紹介します。
Kanda
2022年10月14日
こんにちは、スティップルです。
年内に制作部がクローズすることに伴い、会社を退社することになりました。
そんなわけで、自分が今までやってきた仕事をちょっとだけ振り返ってみようと思います。
どうかお付き合いくださいね(3回シリーズになります)。
ぼくスティップルは1983年大学4年の時にバイトとして十條に入り、
1984年に正社員となり、主にデザインを中心にやってきました。
当初よりいろいろな物件に携わってきましたが、
ぼくが最初に手がけた大きな仕事は1986年のこのステンドグラス。↓
まだまだ25歳の駆け出し、
葬祭場ということで、天と地のモチーフを上下に配し、
その間を虹で繋ぐというイメージでデザインしたように記憶しています。
ところが、クライアントへのプレゼン時、な、なんと、上下逆で採用になったんです・・・。
なんていうことでしょう、そんなことありかなあ〜〜、
と割り切れない気持ち半分、まあ採用になったからいいか半分、
複雑な思いで制作に入ったことを覚えています。
同じ頃、知り合いの音楽スタジオからステンドグラスの仕事をいただき、
デザイン&制作したのが、これ。
かなり個性尖ってます・・・。
スティップルさんの作品が欲しいので、どんなデザインでもOKとのことで、
とても有り難い仕事でした。↓
翌1987年に駅ビルの百貨店の吹抜け空間にデザインしたのが ↓
これはかなり大きい面積でしたね。
今では考えられないですが、贅沢にオパック系のアンティークガラスを全面に使用、
当時10人ほどいた女性パートの方と一緒になってワアワア言いながら制作したのは楽しかったなあ。
またこの頃、建築に使うのはまだまだ珍しかったフュージングの仕事もやりました。↓
短冊に切ったブルズアイのガラスを重ねて溶着、
その後カットソーで側面をウネウネにカットし別のパーツを乗せて再度溶着。
何百本というガラスタイルを作りましたが、これも大変な仕事でした・・・。
大手宿泊施設向けに12ヶ月の花をデザインしたステンドグラスを制作したのは、
その一年後の1989年。各月の花を選ぶのが結構難しく、
特に12月はなかなか見つからなくて、図鑑を探してようやくツワブキに決定、
その時初めてツワブキっていう花があるのを知りました ↓
グラシアムのHPにも載っているカジキのステンドグラスは1994年。↓
↓ のステンドグラスをデザインした時、元々カジキを入れて描いていたんですが、
カジキ無しのプランになってしまって・・・
でもいい雰囲気に仕上がりました。
同じ年、葬祭場向けにこんなステンドグラスも作りました。
今は亡きドイツ・フィッシャー社のブルー・バリゲイトが効いてますねえ! ↓
よく見るとこのステンドグラス、8分割になってますが全て異型。
当時はデジタル図面などなく、もちろん拡大もベニヤ型を頼りにしたアナログなもの。
作ったはいいが、ちゃんとラインが通るのか?心配になりながらの施工でした。
でも意外にうまく行ったんですよ。よかった、よかった
(写真左手前がぼくです)。
その頃、ステンドグラス以外の素材を使った仕事もやるようになり、
天然木を使ったのがこれ ↓
北海道の無垢板を使用したレリーフでとても柔らかみがありました。
子供たちの遊ぶ施設なんかにはぴったりでしたね。
また、変わった素材ということでは、キャストガラスをステンドグラスに組み込んだ物件とか ↓
この写真はほんの一部で全貌をお見せできないのが残念ですが、
幅60mのものが2箇所、つまり全長120mもの長さがあります
(1m50㎝角のパネルが80枚)、おお。
元々は、ちょっと変わったことがしたくて、
当時あまり見かけたことのなかったキャストガラスを使うことに
(キャストガラスとは、デザインに合わせて造形した凹凸のある砂型の上に、
板ガラスを乗せ溶着したもの)。
最初、ぼくの考えた架空の文字を並べたデザインを提案していたのですが、
クライアント側がそれを見て大いに盛り上がり、実際の古代マヤ文字で文章を繋げることを逆提案、
なのでマヤ文字わかる方なら文章読めるんです、
って、ほとんどそんな人いないと思うけど・・・。
で、施工の時の話。
この現場スケールが桁違いにデカく、ステンドグラスを施工するところもすご〜〜〜い吹抜空間、
高さ10mほどある移動式の足場に6人ほどが登って、取り付ける窓にその都度平行移動、
せーので窓に設置、でも揺れて揺れて、怖いのなんの、今ならあり得ない現場だったよなあ。
またこの施工期間中、岐阜の山奥に8人ほどでホテル宿泊、
でも何日か過ぎ作業が進むにつれ、人がちょっとずつ余ってくるので一人二人と名古屋に帰る。
1週間後の最終日にはとうとうぼく一人になってしまいました。
最終日の朝、現場の朝礼で一人するラジオ体操が寂しくって・・・。
1997年から数年間は様々なパブリックな仕事がありました。 ↓
これは国際交流会館に入るステンドグラスだったので、
世界地図をモチーフにし、陸地はあえて透明(面取ガラス)とし、
何色にも染まらない人と人の繋がりを「One World」として表現しました。
同じ時期、名古屋に初のドームが完成。
そのプレミアムシートの壁面に飾る12枚のイラストの仕事なんかもやったなあ、
野球をテーマに一筆の勢いで熱情を表現する、みたいな依頼でした。 ↓
他にも公の仕事で、こんなのや ↓
こんなの ↓
また異素材で、木と陶板を使ったレリーフとか ↓
我が家にステンドグラスを作ったのもこの頃でした ↓
次回へ続きます。
2022年10月12日
ティファニーミュージアムカレンダー2023とガラスの美カレンダー2023が入荷しました。
冊数に限りがありますのでご注文はお早めに!
ティファニーカレンダー2023ですが、NEWSでは10月中旬入荷予定と記載していましたが、11月上旬に入荷予定がスライドしました!
引き続き予約での受付をしてまいりますので、宜しくお願いします。
Takada
2022年10月07日
こんにちは、スティップルです。
今月、ハウジングメーカー向けに規格商品の新シリーズをリリースいたしました!
その名も「2022十條オリジナルステンドグラス &ロートアイアン」。
0404、0413、0613、0713サイズのステンドグラスから、
エッチング、フュージングモザイク、
アイアンでは、玄関手摺、腰壁開口の飾り、3段の階段手摺まで、
以前より大幅にアイテムを充実させました。
ステンドグラスやロートアイアンをお求めになるお客様に、
デザインや価格の目安にもなり、イメージしやすいと評判も上々です。
今後の展開が楽しみです。
2022年10月05日
10月に入り、朝晩涼しくなってきました。地域によってはきっと寒くなってきたところもありますね。
これは私のパソコンのデスクトップの背景の写真です。ローストビーフをフュージングで焼いたお皿に乗せた写真。。。とても美味しそう。。。じゅる。。。デスクトップの背景はその時の気分によって時々変えるのですが、なんだかこの写真がしっくりきてしばらく使っています。
見ていただきたいのはローストビーフ。。。ではなく、お皿の方。お肉やチーズなどを乗せるお皿、“プレート”、をフュージングで作って実際使用しています。使ってみると、作ったお皿のサイズ感が実感できます。今回作ったプレートは少し大きかったですが、形・色・仕上げは使い心地が良いと感じました。次回同じようなプレート作る時には、もう少しサイズダウンした方が使いやすそうです。
今回のブログは、このプレートに使ったガラスと焼成温度、仕上げの方法を簡単に紹介いたします。併せてインスタにもこの写真を載せるので、まだフォローしていない方はぜひフォローお願いします。 #jujo_glass で検索してください!
1.使ったガラス
BUF1100-3AA クリアー(ベースガラス) BUT0013C(オパックホワイト) BUT0113A(ホワイト) BUT1129A(チャコールグレー) BUT1137(ミディアムアンバー) BUT1449A(オレゴングレー) 07-1114 ストリンガー1mm(ディープブルー)※写真はBUF(3mm厚)のサンプルです。BUT(2mm厚)になると、厚みが薄い分少し色がうすくなります。
2.ガラスの乗せ方と焼成温度
a.BUF1100-3AA をベースガラスとして長方形にカットします。
サイズはご自身のキルンやまたお好みよって様々です。
b.ベースガラスの上に、BUT1101AAA(クリアー)やBUT1137A, BUT1129Aを細く
カットした物を高さを合わせて並べていきます。(これらのガラスを隣り合わせで
並べていきます。)
c.その上に適当に四角にカットした他のガラスやストリンガーを置いていきます。
この時は高さが凸凹になっても気にしなくてOKです。(工程bでは高さを揃えます)
d.この状態でキルンに入れます。
3.焼成―温度管理
今回の焼成工程数は5工程で進めました。
工程 ℃/時間 到達温度(℃) キープ時間(分)
1. 200℃ 560℃ 0
2. 350℃ 670℃ 0
3. 9999℃ 800℃ 10
4. 9999℃ 485℃ 120
5. 70℃ 370℃ 0
以上。それぞれの数字には意味があるのですが、長くなるのでこのブログでは説明を飛ばします。ご興味のある方はこちらをご覧ください。温度管理に関しての詳細が掲載されています。
https://www.jujo.net/files/2415/5859/9500/jujo-news-last.pdf
4.仕上げ
今回のプレートは透明感を無くし、マットな仕上げにしました。プレートとしての機能性以外にも、見た目の楽しさや触り心地も気にして作りました。
a.焼きあがったプレートの表面をサンドブラストを施して透明感を無くす。
b.サンドブラスト後は見た目が乾いた感じになるのと、手触りにざらつきが感じら
れるので、カタログ番号13118 研磨布SAセットで手磨きをして、表面を滑ら
にします。これで触ってもツルツルしてて気持ち良いですし、見た目も乾いた
感じがしません。
5.完成写真と使用ガラス番号
完成の写真 使ったガラスとストリンガーの番号を書きました。最近はデジタルで写真にも書き込みができて便利ですね。
6.念の為お伝えしますと、ローストビーフはネット検索して簡単レシピで作ってみました。
a.牛肉ブロックの表面をフライパンで焼き目をつけます。
b.aをアルミホイルで二重にまいて、ジップロックにいれます。
c.お湯が沸騰したら火を切って、bを湯煎します。
d.鍋に蓋をして20-30分を放置
e.完成です。
f.たれは、しょうゆ・みりん・料理酒・ニンニクなどを煮詰めて作りました。
とても美味しかったですよ♪食欲の秋。ご自身で作ったお皿に美味しい料理を乗せて、楽しみましょう。
by jun